Home / 恋愛 / 突然妻がとびっきり甘えてきて、困っています」 / 十五章 「十二月二十五日 イルミネーションデート②」

Share

十五章 「十二月二十五日 イルミネーションデート②」

Author: 桃口 優
last update Last Updated: 2025-08-13 03:07:23

「お礼を言うのは、僕の方だよ」

 僕は深呼吸した。

 正直、かなり緊張している。

 イルミネーションは変わらずキラキラと光っている。

 僕も同じぐらい光り輝けたらどんなにいいだろうか。でも、それはできる気がしなかった。

「なんで、瑞貴ちゃんがお礼を言うの? 私こそ、何かしたかな?」

 彼女は、何か思い当たるところを探してるようだったけど、特に見つからなかったようだ。

「それは、『イベント事』の日を一緒にしたおかげで、僕は花音ちゃんのことを知ることができたからだよ。本当にありがとう」

「私のことを? それは普通のことじゃない??」

 彼女はやはり話についてこれていないようだ。

 確かに一般的にはごく普通なことを僕は言っている。

 彼女が戸惑うのも当たり前だ。

 時間と共に、好きな相手のことをどんどん知っていくことは、至って普通のことだ。

 ただ僕にとっては、その普通のことに気づくことが他の人よりうまくできない。

「いや、おかしな話だと自分でもわかっているけど、今までの僕は花音ちゃんのことを積極的に知ろうとしていなかった。うーん、正確には『好き』と言う思いで、満足していたと言うべきかな。花音ちゃんの優しさに、『好き』に、甘えていた。そして、『好き』という感情は一人では完結させることができないと花音ちゃんは教えてくれた。二人ででするから楽しいこともあるとわかった。だから、その、花音ちゃんとの時間をこれからも大事にしたい」

 僕は話し出すと、自分でもどうすることもできないぐらい次から次へと言葉はでてきた。

 でも、それらには全然まとまりがない。

「ゆっくり話してくれたらいいよ。大丈夫、瑞貴ちゃんの話を私はちゃんと最後まで聞くから」

 胸がちくりと痛くなった。

 僕は彼女のことを今まで考えてなかった。そんな僕が彼女に優しくされる資格なんてないから。

 頭を一度振って、気持ちを切り替えた。

 今は僕がネガティブになっていてはダメだ。

 伝えたいことは山ほどあって、感謝したいこともたくさんある。

 思いを伝えるのって、難しいなとつくづく感じる。

 それでも、僕は伝えることを諦めたくない。

「僕は『イベント事』の日のおかげで、花音ちゃんをもっと理解したいと思い、ちゃんと向き合うことができるようになったから、そのお礼が言いたかったのだよ」

 本当は謝罪もしたかった。

 僕は今まで
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • 突然妻がとびっきり甘えてきて、困っています」   二十二章 「話し合い③〜僕の悩み〜」

    「心の中? それは瑞貴ちゃんのことをもっと知るという意味??」 彼女はゆっくりと聞いてきた。 「いや、そういうことじゃない。えーっと、それは⋯⋯」 さっき覚悟を決めたはずなのに、僕ははっきりと言い出すことができなかった。 本当に自分が嫌になる。 彼女の顔を見ると、決して急かしたりせず僕の言葉をじっと待ってくれていた。「僕の心の中には、『小さな僕』がいるということを言いたい。変なこと言ってるのはわかっているよ。でも本当にいるから」「うん、小さい瑞貴ちゃんがいるのね。そして、その小さな瑞貴ちゃんのことで、悩んでいるのね」 突然の変な話なのに、彼女は驚きも変な顔もせず聞いてくれて、僕の言いたいことまで察してくれた。「えっ、『そんなのいない!』と否定しないの?」 僕は自分で話しておきながら、彼女の反応に聞き返さずにはいられなかった。 普通に考えても、心の中に小さな自分がいるなんて話はおかしいし、それを確かめるすべも誰にもないから。「私は、瑞貴ちゃんを信じているから、瑞貴ちゃんの言葉を否定はしないよ」「その『小さな僕』が、僕のすること全てを否定してくる」 僕は頑張って、思いを言葉にしていく。「それは、辛いね」 彼女は、心配そうな顔をしていた。「うん、辛い。でももう『小さな僕』に負けるのは嫌だ。花音ちゃんと向き合ったように、僕もちゃんと『小さな僕』と向き合いたい」 彼女はしっかり頷きながら聞いてくれている。 どうしてこんな僕のことを信じてくれるのか、僕には本当にわからなかった。 花音ちゃんのことを信じることはできても、僕は僕自身を信じることができないから。「僕は、自分に自信がない」「うん」 彼女のことだから、僕のことはすでにわかっているだろう。 僕はさらに言葉にしなきゃと思い、パニクった。彼女が感じている以上に僕の自信のなさは深刻なのだ。「僕はとにかくとことん自分に自信がない。自分を肯定したことなんてこれまでの人生で、一度もない。自分で自分をほめたこともない。それは心の中に『小さい僕』が現れる前からそうだった」「そうだったのだね」「そして、『小さな僕』がいつ間にか心の中に生まれていた。『小さな僕』は、僕の自信のなさそのものなのかもしれない。『小さい僕』は、僕の言葉や行動などあらゆるものを否定する。僕は様々な言葉を『小さな僕

  • 突然妻がとびっきり甘えてきて、困っています」   二十一章 「話し合い②〜彼女の不安〜」

    「瑞貴ちゃんって、やっぱ鋭いよね」 彼女は乾いた笑顔を浮かべていた。「瑞貴ちゃんの言う通りで、私は夫婦に関係するあることで、ずっと不安を抱えているよ」 彼女の声のトーンは落ちていった。 何かはわからないけど、重く深い感じがした。「私は、私たちの『未来』についての不安なのだよ」 彼女は、とても曖昧な言葉を使っている。 相当言いにくいことなんだろうと心配が募る。「未来について?」「そうだよ」「それは、さっきずっと一緒にいようと話し合ったことでは、補えないほどの問題なの?」 僕は確認するかのように、ゆっくりと声をかける。「そうね。これは、そういう次元の問題じゃない」 彼女はいつもと違い、仮面を被ったように硬い表情をしている。 そこからは感情が読みとれない。「そうなのだね」 僕は決して答えを急がず、彼女のペースに合わせようと思った。「瑞貴ちゃん、親になる準備をする日の『イベント事』の日のこと覚えてる?」 彼女は突然そんな話をもちだしてきた。「うん、覚えているよ」  その『イベント事』の日の時は、僕たちは子どもができてからではなく、その前にもっとお互いを知り、育児についての方向性なども固めておこうという話をした。「瑞貴ちゃんは、親になりたいよね?」 彼女は、まだ表情のないままだ。 こんな時どう答えるのが、正しいのだろう。 正直なことだけが全て正しいことではないと僕はなんとなくだけど知っている。 彼女が求めている答えは、どっちだろう。 僕は答えに迷った。「うーん、二人とも本当に子どもほしいと思った時に、親になれるといいかな」 僕は結局、曖昧にぼかすことしかできなかった。 自分が情けない。「そんな空気を読んだ言葉が聞きたいんじゃない!」 彼女の言葉も、強い声も、その場を凍りつかせるには十分すぎるほどのものだった。 それから、彼女は一層切ない表情になった。 僕はもう彼女にそんな表情をさせたくないのに。「もしも、それが永遠に叶わないとしても、瑞貴ちゃんは本当に私とずっと一緒にいてくれる?」 彼女は、目をうるませながらまっすぐに僕の目を見つめてきた。「そばにいるよ」 僕ははっきりと伝えた。 子どもがほしくて、彼女と恋したわけでも、結婚したわけでもない。 彼女の素敵なところに惹かれて、僕は彼女のそばにいようと

  • 突然妻がとびっきり甘えてきて、困っています」   二十章 「話し合い①〜夫婦とは?〜」

     今日は一般的にはなんの『イベント事』もない、普通の日だ。 でも、今日は、僕たちには大事な『話し合い』の日だ。 いつものように隣同士で仲良くこたつで座るのたけど、今日は少しだけ緊張している。 僕は温かいコーヒーと紅茶を用意してもっていった。 コーヒーを飲む時間を一人でとるのではなく、その時間も二人で楽しみたいと思うように僕は変わった。 最初に話し出したのは、彼女の方だった。「話し合いをする前に、一つ約束をしてほしいことがあるの」「約束?」「うん。たとえ相手の考え方が、自分の考え方と違っても相手を『否定』しないことを約束してほしい。誰かや何かを否定することはすごく簡単で、楽だよ。でも、本当に大切な人に何か一つでも否定されたら、それはすごく辛いことだから」「わかった。約束する」 僕は元から彼女のことを否定したりはしないけど、今回はより一層否定しないことを意識するようにした。「ありがとう」 彼女はホッとしたような顔をした。 彼女はたまにそのような表情をする。 僕はそのことについて、どうしたのかずっと聞きたくても聞けなかったから、今回は頑張って聞いてみることにした。「あのさ、花音ちゃんでも、不安になることあるの?」「当たり前でしょ。瑞貴ちゃんは、私をなんだと思ってるの?」 彼女は怒っていないけど、びっくりしていた。「やると決めたら、なんでも完璧にこなす人」 さらに言うなら、僕みたいにネガティブで、悩み出すとなかなか抜け出せない人ではないと思っている。「えっ、あはは!」 彼女は突然笑い始めた。「えっ、どこかおかしかった?」「これだけ話していても、まだまだ伝わっていないことってたくさんあるのだなー」「伝わっていないこと?」 僕はまた間違った認識をしていたのだろうか。心の中からまた暗い感情がゆっくりと湧き上がってこようとする。「そう。私は全然『完璧』なんかじゃないよ。実は、私は年上の瑞貴ちゃんの相応しい人になるためにいつもギリギリなのだよ。それがたまたま瑞貴ちゃんにはさも完璧のように見えただけだよ。いつもちゃんとできてるかなと不安だらけなのだから」「そうだったのだね。花音ちゃんのことまたわかってなかったね。ごめんね」「いいのよ。私がしたくて、やっていることだから」「でも、無理はしないでね」 彼女の努力を知ることができて

  • 突然妻がとびっきり甘えてきて、困っています」   十九章 「理想の夫婦像とは?」

     僕は夫婦になった日を思い出すことで、気づきがあった。 彼女は夫婦になる前から、甘えていた。 僕が、ただそれに気づけていなかっただけだ。 彼女の気持ちを考えると、胸が痛くなってきた。 彼女は僕にいつも心を開いているのに、僕からは何の反応も返ってこないのだから。 寂しいという言葉で、とても現れないほどのものだったと思う。 僕は今こたつに入っている。 彼女とまったりとおしゃべりをしたいところだけど、今日は「理想の夫婦像について、一人で考える時間をもらいたい」と彼女に声をかけていた。 僕は話し合いをし、早く彼女ともっと心を通わせたい。 彼女は「わかったよ。終わったら声かけてね」と穏やかな声で返事をくれた。 「ありがとう」と伝え、僕は一人で考え始めたのだった。 まず彼女はお互いにどんな夫婦を理想像としているか改めて考える時間を各自でとってみようと彼女は言った。 そもそもなぜ各自で時間をとるのかと僕は考えると、考えるのに時間がかかる僕のためだとわかった。 彼女には本当に敵わない。 僕は一体どんな夫婦になりたいと思っているかという話に、思考を戻した。 正直、前までの僕なら迷うことなく、『彼女が常に幸せだと感じられるような夫婦』を理想像とする。僕がいくら大変でも彼女にひたすら尽くして、彼女が幸せそうな顔をしてくれたら、それで僕のことはどうでもいいと思っていたから。 でも、『イベント事』の日を一緒にしていく中で、僕は彼女の考えや望むことをわかってきた。 『ただ優しい』ことと『自己犠牲』を彼女を望んでいない。 僕は、夫婦であるなら二人で同じ方向を向きたいと思っている。僕あるいは彼女が望んでいないことを続けても、僕たち夫婦にとっての幸せにはつながらないから。 そうであるなら、僕はもう一度白紙の状態で、どんな夫婦になりたいか考える必要がある。 僕は『イベント事』の日のことを思い返すことにした。 『イベント事』の日を彼女がわざわざやってくれたことを、僕は無駄にしたくない。 『全てのことには意味や起源がある』とら彼女は十二月の『イベント事』の日に言っていた。 まず、自分が彼女のことを知らないとわかった。そこから、彼女の気持ちをちゃんと考えるようになった。彼女の気持ちを知ることは、彼女と向き合うことであった。 また、今まで僕にとって曖昧だった『

  • 突然妻がとびっきり甘えてきて、困っています」   十八章 「過去編 夫婦になった日」

     ホテルに宿泊して、昼頃に家に帰ってきた。 僕は『夫婦になった日』のことを思い出すことにした。 それが『夫婦』について考える第一歩となると僕は思ったからだ。 時間は、去年の十月一日までさかのぼる。「ねぇ、瑞貴ちゃん。婚姻届をいつ出しに行くかそろそろ決めない?」 僕たちは、すでに両家の親に結婚の挨拶をしに行って、引っ越しの準備なども終わっている。 結婚準備は、残すは婚姻届を出すだけだ。 そうすれば、毎日一緒にいられる。 僕は、想像しただけで頬が緩んだ。 彼女とずっといられるなんて、他に変えようもない幸せなことだ。 今までは、何かしらの方法で毎日連絡はしていた。それでも会えるのは、デートの日だけだった。お互いに働いていたから、どうしても二人の休みの日しか丸一日一緒にいられなかった。 いくら頻繁に会っていても、彼女に会いたい気持ちは満たされることはなかった。  僕は相当彼女にほれているらしい。 確認したことはないけど、彼女もそうだと嬉しいな。 とにかく僕はいつも彼女に会える日が、待ち遠しかった。楽しみで仕方なかった。「うん、そうだね。本当にこの日が来るのを楽しみに待っていたよ。出しに行く日、いつがいいとか花音ちゃんはある?」 心のワクワクも隠さずに、彼女に伝える。 嬉しい気持ちは、きっと人を幸せにする魔法があるから。 彼女と過ごしてきてそう思うように、僕は変わった。 そして、僕は彼女の意思を第一に尊重したいと思っている。 もちろん、二人の大切な日だということはわかっているけど、それでも僕は大好きな彼女の意見をできるだけ聞いてあげたいと思う。「そうねー。あっ、十一月一日がいい! むしろ十一月一日じゃなきゃ嫌」 彼女は何かを思い出したようだ。「花音ちゃんが、そこまで言うなんて珍しいね」 彼女が甘えたり駄々をこねるなんて、本当に珍しいことだ。むしろ、初めてかもしれない。 いつもの彼女は、控えめで自己主張するタイプではない。 そんな彼女がそこまで言うのだから、きっとそれだけ大切な何かがあるのだろう。「ねぇ、十一月一日に出しにいける?」 僕が考えていると、彼女はさらに甘えた声で言ってきた。「うん。じゃあ十一月一日しよう」「やった。じゃあその日が、私達の『結婚記念日』になるね」 僕は、元々この日にしたいというのがなかった

  • 突然妻がとびっきり甘えてきて、困っています」   十七章 「『きゅんとさせて』と言った理由③」

    「『きゅんとさせて』と言った三つ目の理由は、まずこれが一番大切な理由だからよく聞いてね。それは二人に合った夫婦の形を見つけたいからだよ」 彼女は珍しくはっきりとした口調だ。「夫婦の形を見つけたい?」 彼女の言葉に、驚かされるのはいつものことだけど、今回のは今までと比へものにならないほどのものだった。 『イベント事』の日を通して、相手の気持ちを理解することや愛情を伝えることの大切さはわかった。 しかし、僕には、『イベント事』の日に『夫婦』に関して、深く考えることはなかった。 僕は改めて『夫婦』という言葉について考えてみたけど、何も言葉が浮かんでこなかった。 なせ夫婦に形を求めるのだろう。そもそもそんなに色々な形があるのだろうか。 僕たちは結婚して、『恋人』から『夫婦』になった。 それは特別で、大きな変化であったを でも、僕は彼女のことが好きで、彼女も僕のことを好きでいてくれている。 それで、いいのではないか。 それ以上に、何が必要なのだろうと僕は頭を悩ませるた。「夫婦に形なんて求めなくていいんじゃない? と今思ってるでしょ」 彼女自身満々に聞いてきた。「えっ、何でわかったの?」 僕は一瞬心の中を読まれたのかと本気で思った。「私が、瑞貴ちゃんのことをどれだけ思っているかまだまだわかっていないね。それぐらい瑞貴ちゃんの顔を見ればすぐにわかるよ」「それはすごいね」 驚いたけど、同時にそれは嬉しいことでもあった。 その言葉一つで、彼女が僕のことを思ってくれているのが瞬時にわかったから。 彼女の言葉って、本当に思いがつまっている。 彼女に比べたら、僕はまだまだ彼女のことをわかれていないだろう。 僕も、もっと彼女のことを知りたい。「じゃあ聞くけど、瑞貴ちゃんにとって『夫婦』とは、何?」 彼女は真剣な顔で、質問してきた。「愛し合う二人が、ずっと一緒にいる証?」 僕は迷いながら答えた。 迷ったのは、自分の言葉に自信がないからと、まだ自分の中で夫婦について確かな答えが出ていないからだ。「うーん、間違っていないけど。瑞貴ちゃん、それはちょっと甘いよ。夫婦とは、意味的には婚姻関係のある男女のことを指しているにすぎないのよ。そこには二人を結ぶ絶対的なものはない。私にしたら少し現実的な発言と思うかもしれないけど、私たちは元は他人だとい

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status